6月12日(日)

 昨日はグレートホステスへ行けなかった。
 今日も14時から仕事の打ち合わせがある。終わるのはおそらく夜遅くになる。
 ならば打ち合わせが始まる前に行ってしまおう。12:00にグレートホステスへ。
 沙夜ちゃんがいなくても入るつもりだ。朝飯を食べていないもんで。
 駐輪場を見てみる。沙夜ちゃんの自転車がありますな。なははは、気が楽だ。緊張する必要はもうないからね。
 店内を見てみる。さすがは昼時、席待ちの客がソファで順番待ちをしている。こんな混雑時に一人で入るのは少々気が引ける。
 入店する。席待ちの客の間を通り抜けてレジのところへ。いつものさんが対応してくれる。いつもの・モノポリーさんが。
 「お一人様ですか。禁煙席でよろしいですか」
 ワシがいつも禁煙席に座るということを覚えていたのか、あるいは混んでるから禁煙席の小さい二人がけの席に座らせたほうが都合がいいからなのかはわからないが、何も言わなくても禁煙席という言葉が出た。
 案内されたこの席は、周りに仕切りがあって周囲が見渡しにくい。でも混んでいるから文句を言わずにこの席へ着いた。
 そのとき、衝撃が走った。なんと若乃花店長、離任である。新しい店長に代わっていた。
 沙夜ちゃんと仲がよい(あるいはデキている)店長、異動したか。まさか沙夜ちゃん、そろそろ悲しみの辞職?
 いや、デキているなら一緒に働く必要もないから、その影響で辞めることはないだろう。
 店長がいなくなってしまったことで、沙夜ちゃんと店長の仲がますます不透明になってしまった。知らないところで付き合っているのかもしれないし。
 そんなことを考えていたら沙夜ちゃん登場。相変わらずギャル面の沙夜ちゃん。あまり可愛くねぇ〜。
 ちょっと表に出たらすぐに早足でキッチンに戻って行った。忙しそうだ。
 前に沙夜ちゃんの指導を受けていた新人さんが注文を取りに来る。グラタンを頼んだ。
 レジのところに亀島さん。珍しく客と楽しそうにお話しをしている。あまり客とのふれあいがないこの店においては珍しいことだ。
 考えてみれば、アットホームな雰囲気がないこの店の中でも、亀島さんだけは常にお客さんに笑顔を振りまいていたよな。
 このワシに対してもそうだった。レジでお釣を渡すだけでもあの笑顔、ワシが1日に2回来たときに出迎えてくれたときのあの笑顔…。ワシはその素敵で、そして何よりも明るい笑顔を、何だかんだと事由をつけて受け止めなかったのだ。愚か者め!
 亀島さんが笑顔をくれていたのにワシはいつも暗い表情だった。そしていつしか亀島さんもワシに笑顔をくれなくなった。
 その流れで、ワシは暗い人間であるということがキッチン中に伝わっていったのではなかろうか。
 沙夜ちゃんに夢中になっていたために、大切なものを踏みにじっていた。恋をする者のよくある愚行である。
 取り戻したいのは沙夜ちゃんとの位置関係ではない。亀島さんの笑顔だ。何とかしてあの日のような可憐な笑顔をまた振りまいてもらいたい。
 なんだか「亀島ファンクラブ」になってるな。そろそろ視線を沙夜ちゃんに戻そう。
 今日は沙夜ちゃん、表にはあまり出ず、裏方の仕事が多い。たまに出てきても、用事を済ませるとかなりの早足でキッチンへ戻る。ワシのことなんかチラリとも見ずに。
 見ないというより、モロに顔を背けているようにも見えた。
 座って手帳を見ている。すると、最近セルフサービスじゃなくなったお冷を亀島さんが注ぎに来てくれた。ワシは暗い表情を捨て、亀島さんにお礼の会釈をした。大事に飲ませていただきます。
 相変わらず早足で動き回る沙夜ちゃん。キッチンに入る直前、ワシのことをチラッと見た。やっと見てくれた。
 「まだいるの〜?」とか思うんじゃないぞ?
 時刻は13:20、そろそろ出発しないと打ち合わせに遅れてしまう。さて出ましょう。レジでは新人がお客の会計をしている。ではその次に頼も。
 ワシの番になり新人に伝票を差し出す。するとそこに亀島さんが来て、レジを交代した。
 よし、笑顔を取り戻すチャンスをくれた。愛想良くいこう。
 会計900円で千円札を出す。レシートとポイントカードが出てくるのを待つ。
 そこに忙しくてなかなか表に出てこなかった沙夜ちゃんが出てきて通り過ぎた。今日は「ありがとうございました」の声はなし。
 おつりの100円とポイントカードを受け取る。ちゃんと愛想良く会釈。すると亀島さんもワシと同じ程度の笑顔を返してくれた。
 なるほど、同じくらいの笑顔を返してくれるのね。満面の笑みがほしければこっちも満面の笑みをすればいいんだな?
 それは変だからやめておくが。
 沙夜ちゃんがダメでも楽しみが尽きないグレートホステス通い。また来週。

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